コーヒー溺路線
 

「二十四か、私の年より三つ下だな」
 

 
「ああ、やっぱり先輩ですね」
 


 
先程から何度か出たやっぱりと言う言葉は、松太郎に何らかのイメージを持っていたのだろう。松太郎は自分よりも年が上で、コーヒーをブラックで飲むというような、そんなイメージだ。
 


 
「ということは、部署内の一人一人全員にミルクや砂糖の数も聞いて回っていたのか」
 

 
「そうです。コーヒーは好みのものでないと飲んでも美味しくはないと思いますから」
 


 
こんなところにとんだコーヒー好きがいたものだと松太郎は感心していた。
 


 
「藤山さん、富田さん、その内二人の歓迎会をしようと思っているの。来週の金曜日あたりに予定していますから、空けておいて下さいね!」
 

 
「ああ、ありがとうございます」
 

 
「わざわざすみません」
 


 
急に話しかけてきたのは、松太郎や彩子のデスクの斜め前に座っている茶髪を肩にかかるくらいのところで揃えている女性だった。
 


 
「急にごめんなさい、この部署の人は何かと集まりたがるお祭り集団なのよ。私は小野梓です、よろしく」
 

 
「よろしくお願いします」
 


 
よく話す女性だと思っている松太郎の隣りから、彩子のはきはきとした声がした。
 


 
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