コーヒー溺路線
松太郎は先程と同じようにエレベーターに乗り込んだ。これからまた通常勤務に戻るのである。
松太郎がいつまで経っても部署に戻ってこないのだから、部長の根岸が酷く心配をしていることだろう。
エレベーターは直ぐに企画発足部のある六階へ到着した。
「遅くなってすみません。ただ今戻りました」
様々なデスクの所々からお帰りなさいという声が聞こえた。松太郎は非常に清々しい気分で彩子のデスクの隣りにある自分のデスクについた。
そこに前程の気まずい空気はない。
松太郎は気分が良かった。
「藤山さん、なんだかご機嫌ですね」
いつもと変わらずマイペースな様子で松太郎に聞いてきたのは小野梓だ。
「そうですかね」
「顔色も良いし、顔が緩んでますよっ」
今の松太郎には、呆れたように笑う梓さえもなんだか気分が良かった。
このまま上手く事が進めば良い。
そうして、早くもう一度彩子を自分の物にしたいのだと松太郎は決意を新たにした。