コーヒー溺路線
横断歩道を渡った先にあるコンビニエンスストアに入ると、冷房がとても効いていた。
背中にかいた汗が乾いていくのを感じながら彩子は松太郎の隣りから離れてお茶のペットボトルが並んでいる棚を覗き込んだ。
「社に戻れば旨いコーヒーがあるのに昼食を取る時はお茶なのかい?」
「ええ、コーヒーはコーヒーだけで飲むのが好きなんです」
「たくさんこだわりがあるんだな」
五百ミリリットルのサイズのお茶のペットボトルを一本手に取ると、彩子は続いて弁当の並んでいる棚の前へ移動した。
松太郎は既に冷やしうどんのパックを手にしている。それを目敏く見た彩子は私も冷たい物にしよう、と思いざる蕎麦のパックを手にした。
「いらっしゃいませ。三百九十八円になります」
松太郎は女性の店員からぶっかけ冷やしうどんの入ったビニール袋を受け取り、まだ隣りで商品をビニール袋に入れられるのを待っている彩子を待った。
遅くなってすみませんと言いながら彩子は袋をぶらさげて松太郎の元に駆け寄る。謝らないでと返すと困ったように微笑んで、また隣りを歩き始めた。