コーヒー溺路線
コーヒーの姫
今日は七夕である。
彩子と松太郎が初めて出会った七夕の日から、早十年近く経った。
二人は仕事帰りにいつものコーヒーショップに立ち寄り、今年もマスターが作ったケーキをもらって帰宅した。
部屋で二人はそのケーキを囲んでいる。
「彩子、おめでとう」
「ありがとうございます」
彩子は以前と同様に、松太郎の胸に頬を擦り寄せている。
松太郎はくつくつと喉を鳴らして笑い、彩子の腰に腕を巻き付けて抱き寄せた。
「コーヒーをいれようか」
「あら、松太郎さんがいれてくれるの?」
「もちろん、今日は彩子の誕生日だからね。彩子がお姫様だ」
彩子はおかしそうに笑った。
松太郎はもう一度腕に力を込めて彩子を引き寄せ、その唇に軽く口付けた。