コーヒー溺路線
 

「うっ、うう……」
 


 
彩子の喉を押し潰すような声が松太郎の全身に浸透してゆく。
 

松太郎は彩子の髪を手でくしゃりと梳きながら自身の体へ押し付けた。
 


 
「来ないかと、思った。もう一生会えないと、思った」
 

 
「彩子、彩子、迎えに来たよ」
 


 
遅くなってごめんと何度も言いながら、松太郎は泣きやまぬ彩子を抱き締め続けた。
 

自分にしがみついたまま離れようとしない彩子に、松太郎は参った。それと同時に愛されていることを実感した。
 


 
「コーヒーをいれようか」
 

 
「あら、松太郎さんがいれるの?」
 

 
「もちろん、今日は彩子の誕生日だからね。彩子がお姫様だ」
 


 
すると彩子はおかしそうに笑った。
松太郎はもう一度腕に力を込めて彩子を引き寄せ、その唇に軽く口付けた。
 


 
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