コーヒー溺路線
 

「美味しいからな、君のコーヒーは」
 

 
「嬉しいです、そう言ってもらえて」
 


 
ふふ、と笑うと彩子は割り箸を割った。頂きますと言うと二人で同時に食べ始めた。
 


 
「藤山さん、アメリカではどんな物を食べられていたんです?」
 


 
ふと彩子が聞いた。
そうだな、と少し松太郎は唸ってから箸を置きコーヒーを一口飲んだ。
 


 
「そうだな、私は普段サンドウィッチだったよ。時々デリバリーを頼んだこともあったな」
 

 
「サンドウィッチ、美味しそう。コーヒーに合いそうです」
 

 
「うんそうだね、私はその職場でも自宅でも自分でコーヒーをいれていたよ。他の人がいれると味が違ってしまうから」
 

 
「そうですよね、やっぱりこだわりがありますよね」
 

 
「うん。それから後は、そうだね、ハムかな」
 

 
「ハムですか?」
 

 
「うん、たまたま買ったハムがこんなに大きな缶詰のものでね」
 


 
そう言いながら松太郎が両手で三十センチメートルほどの楕円形を作ってみせた。
 


 
「そう言った缶詰なんかは、中のハムの味付けがとても塩辛いんだ。きっと大きいから長期間保存ができるようにではないかと思うんだけど、塩は使わずに焼いても塩辛くてね」
 


 
全く日本人の口には合わないよと松太郎は溜め息を吐いた。相槌を打ちながら彩子はペットボトルのお茶を飲んだりしていた。
 


 
< 22 / 220 >

この作品をシェア

pagetop