コーヒー溺路線
 

松太郎は彩子の行き付けのコーヒーショップに連れて行ってもらうか迷った。彩子からただならぬ雰囲気を感じたからである。
 

今はもうこちらを向いて立ち上がった彩子を松太郎は心配そうに見つめた。それから二人はエレベーターに乗り込んだ。
 


 
「あの、大丈夫?」
 

 
「大丈夫ですよ、気にしないで下さい。お店がここから少し離れた所にあるのでタクシーを呼びましょうか」
 

 
「タクシーは勿体ないですよ。今日は車で来ているので道を教えて下さい」
 

 
「解りました」
 


 
そう言ったきり、彩子は俯いて黙ってしまった。松太郎も余計なことはすまいと黙っていることにした。
 

ポン、と音がしてエレベーターは一階のロビーへ着いた。なんだか、ふわりとどこかへ飛んで行ってしまいそうな人だ、と思いながら無言で降りた彩子を松太郎は見つめた。
 

そこで待っていて下さいと釘をさし、松太郎は地下車庫へと駆けてゆく。そんな松太郎を彩子は見つめていた。
 

女性はあんな素敵な男性が旦那様ならば、皆幸せになれるのだろうなと彩子は思った。
 


 
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