コーヒー溺路線
 

国際空港を出ると、そろそろ迎えが来るはずだなと藤山松太郎は思った。
 

アメリカのサンディエゴを堪能した。
仕事ばかりの毎日だったし、塩分の多い料理は純日本人の松太郎には口に合わなかったが、仕事をするにはとても刺激のある良い職場だった。
 

あまり使う機会のなかった英語も今では母国語のように、ともいかないが生活するには十分、それなりに話せるようになった。
 

やはり本場の英語の音楽は良かった。
 


 
「藤山様」
 

 
「ああ、ありがとう。待っていたよ」
 

 
「すみません、少々道が混んでおりましたので遅くなってしまいました。さあトランクを」
 


 
松太郎が待っていた迎えの車が目の前に停車した。
その車の運転席から出てきた執事が松太郎の荷物のトランクを車へ積む。
 


 
「どこかへお寄りになられますか」
 

 
「そうだな、あの行きつけだったカフェはまだしているかな」
 

 
「もちろんでございます、それではそちらに向かいますね」
 

 
「頼むよ」
 


 
アメリカのコーヒーも旨いものだったな、と松太郎は思った。
人一倍コーヒーの味にうるさい松太郎は日本に帰ったらまずその行きつけのカフェに行こうと心に決めていた。
 


 
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