コーヒー溺路線
 

「マンションを買ってもらったということは……賃貸ではなくてってことよね」
 

 
「そうね」
 

 
「靖彦さん破産したんじゃ」
 

 
「実家はなかなか裕福みたい」
 

 
「ああ、そうなの」
 


 
最初は神妙な表情で聞いた葉月も実家が裕福なのだと聞くとけろりとした顔で頷いた。
 

葉月のそういうあっさりとした反応や思考を彩子は好きだなと思っている。話しやすくて、余計な詮索はしないが叱ってはくれる。良い友人である。
 


 
「それはそうと葉月、今日子どもは?」
 

 
「久しぶりの彩子からの呼び出しだもの、今日は愛する旦那様が子守をしてくれているわ」
 

 
「そう、幸せそうで良かった。今度は遊びに行くわ、何か菓子でも土産にして」
 

 
「あら助かるわ。最近上の子が二歳になったばかりだけどいろいろな物を食べたがるから、あ、でも柔らかい物にしてね」
 

 
「はいはい、また連絡する」
 


 
コーヒー一杯でずっと話し込んでいたのでそろそろカフェを出ることにした。
久しぶりに見た友人もいつもと変わらず幸せそうで良かったと彩子は思った。
 

良妻賢母という言葉が似合う葉月の背中をしばらく眺め、彩子は逆の方向へ向かって道を歩き出した。
 


 
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