コーヒー溺路線
 

彩子は欠伸をした。夏になりきっていない朝は少しだけ蒸し暑い。
湿気が多くて体がベタベタする。その不快感に彩子は顔をしかめた。
 

いまいちしゃんとしない体をおもむろに起こしてみると体はぎしぎしと言った。少し伸びをする。
 

そうしてようやくベッドから降りるとコーヒーをいれる為にキッチンへ向かった。
 


 
「あ……」
 


 
いつものようにコーヒーをいれようとマグカップを片手に、ひいたコーヒーを入れている瓶が底を尽きそうなのが見て取れる。
そういえば瓶に並々あったコーヒーは昨晩別の場所へ移したのだと思い返した。
 

今日の仕事の帰りに新しくコーヒー豆を買いにマスターのところへ行こうと彩子は思った。
 

コーヒーをいれて空になった瓶を流し台に置き、リビングに行きテレビをつけた。
いつものように芸能人の誰が結婚をしたとか離婚をしたとか、更には未成年の飲酒で引退だとかを報道している。
 

それに対してコメントをしているらしいなかなか年のいった中年男性は尤もらしいことを言っている。
暇な人ねと彩子は胸の内で笑ってみせた。
 


 
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