コーヒー溺路線
 

「富田さん、頑張って歩いてね」
 

 
「あ、鍵」
 

 
「ああオートロックなんだな。今直ぐに開けるから大丈夫だよ」
 


 
ロビーに入る為に鍵を開け、自動ドアが開くことを確認してから真っ直ぐにエレベーターを目指して歩いた。
幸いにもエレベーターは一階に着いていて上を向いた矢印のボタンを押すと扉が開いた。
 

彩子の手を引いてエレベーターに乗り込み松太郎は何階なのかと彩子に聞いた。
 


 
「四階です、四階」
 

 
「四階だね」
 


 
小さな声に耳を傾けて松太郎は聞き取り、エレベーターで四階に向かった。彩子は壁にもたれかかったままだ。
 


 
「さあ四階に着いたよ、部屋まで歩けるかな」
 


 
こっちですと呟いた彩子に松太郎も一応はついて行き、彩子が示す一室の前に着くと鍵を開けて彩子を中へと促した。
 


 
「もう大丈夫だな、富田さん、しっかり酔いを覚ますんだよ。また会社で」
 


 
松太郎が扉を閉めている時に、小さくありがとうございますと礼を言う声がしたような気がした。
 


 
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