コーヒー溺路線
彩子を無事に部屋まで送り届けた松太郎は、タクシーを待たせているので急いでマンションを出た。
すみませんと一言運転手に言うと、車体の扉が開いた。
「お待たせしてすみません」
「いえいえ、構いませんよ」
タクシーへ乗り込んだ松太郎がそう言うと運転手はまた屈託のない笑顔で返した。
松太郎は自分が暮らすマンションの場所を運転手に言い、それは彩子のマンションからあっと言う間に着いた。
「ありがとう」
「ありがとうございました、またよろしくお願いしますね」
ぜひまた、と松太郎が答えると運転手は少しだけ手を振りタクシーは去って行く。
松太郎はマンションに入り、三階にある自分の部屋を目指した。
「ふう」
子供のようにフラフラと歩く彩子を思い出して松太郎は少しだけ口元が緩んだ。
酔っている女性とはなかなか可愛らしいものだと松太郎はふと思った。