コーヒー溺路線
 

彩子が車を運転している松太郎を見るのはあのコーヒーショップに行ったとき以来で二度目である。
 

どうして誘われたのだろう、と彩子は思った。それからどうして自分は快く頷いたのかということも。
 


 
「あ、私のマンションあれですよ」
 


 
松太郎は前方にそびえ建つマンションを指した。彩子は意外と近いですねと感嘆の言葉を口にした。
 


 
「うん、昨夜にタクシーで君を送ったときに近いんだなと思ったよ」
 

 
「本当、凄い偶然」
 


 
松太郎の言う喫茶店は彩子の住むマンションより車で二十分ほどの場所にあった。
五台ほど駐車できるスペースが店の横にあり、そこは松太郎の車が停まると満車となる。
 


 
「ああ良かった、まだ並んではいないようだな」
 

 
「お洒落なお店。この辺りに喫茶店があるだなんて知らなかったです」
 


 
なかなか可愛い店だろうと松太郎は誇らしげに笑ってみせた。
 


 
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