コーヒー溺路線
 

なんだかお互いが恥ずかしくなり、そわそわと忙しなく眼を逸らしていた頃にウェイトレスが注文したパスタとグラタンを盆に乗せてやってきた。
 

お待たせ致しましたとそれぞれの皿がテーブルに置かれ、彩子から美味しそうと感嘆の声がした。
 


 
「頂きます」
 


 
礼儀正しく手を合わせ頭を下げながら言う彩子に、ああこの人のこういうところが良いのだと松太郎は思った。
 

それと同時に前にも休憩室でそうした彩子を松太郎は思い出した。
 


 
「美味しいっ」
 

 
「良かった」
 


 
ゆっくりと口にしたパスタに自然と頬が緩む彩子に松太郎は答えた。
 


 
「美味しいです、これが千円もしないだなんて」
 

 
「そうでしょう」
 


 
私はいつもこの海老グラタンを食べていますと松太郎は言いながら、いつもの海老グラタンを口にした。
 

そんな松太郎を彩子はじっと見つめた。
 


 
「どうしたの、富田さん」
 

 
「いや、その」
 


 
その視線に気が付いた松太郎が顔を上げると彩子は狼狽してフォークをかちりと皿にあてた。
 


 
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