コーヒー溺路線
「ふう、美味しかったです。ご馳走さま」
彩子は食べる前にしたように、礼儀正しく手を合わせて頭を下げた。
疾うに食べ終えて松太郎はウェイトレスを呼んだ。
「空いたお皿お下げします、コーヒーをお持ち致しますね」
「コーヒー?」
注文をした覚えのないコーヒーをウェイトレスが持ってくると言う。彩子は不思議そうに松太郎へ目配せをした。
「ここは午前十一時から午後三時までの間にランチタイムのサービスでコーヒーが付くんだ」
「そうなんですか、凄いです」
「そのコーヒーもなかなか美味しいんだ」
「楽しみ」
彩子は納得したように数回頷き笑った。
松太郎は先程からこの後はどうしよう、と考えていた。
「コーヒーです、熱くなっておりますのでお気を付け下さい」
「ありがとうございます」
間もなく運ばれてきたホットコーヒーに、彩子と松太郎は吸い寄せられるように口を付けた。