コーヒー溺路線
こんなにも、自分は彩子を求めていたのかと松太郎は恥ずかしくなった。時間が経つにつれ、だんだんと貪欲になる自分。
腕の中の彩子を離すことができない。
「彩子、キスがしたい」
「そんなこと言わないで下さいっ、恥ずかしいっ」
あまりのダイレクトな松太郎の言葉に彩子は驚いた。拒む必要はないし、恥ずかしいからと言う理由で拒もうとする自分が恥ずかしい。
もう、どうにでもなればいいと少し投げやりに彩子は松太郎にキスをせがんだ。
「彩子っ」
ゆっくりと唇と唇が触れ合う。彩子の唇を、唇で啄むように松太郎が彩子を追い詰める。
そっと唇が離れる。
次の瞬間にはまた唇が触れ合う。
次第に貪るように唇が交じり合う。
息が荒くなるのが解る。
彩子を抱き締める松太郎の腕の力が更に強くなった。
「ん」
長い長いキスの後。
ちゅっとリップノイズがして唇がようやく離れた。
「しまった。更に離れられなくなった」
松太郎の情けない声が響いた。
彩子と松太郎のファーストキスだった。