コーヒー溺路線
カップの傷
 

須川俊平は富田彩子を見つめていた。
俊平の視線の先にはいつも彩子がいる。
 


 
「さあ彩子、乗って」
 


 
藤山松太郎だ。
ありがとう、と言うと彩子は松太郎の車に乗り込んだ。二人は恋人同士である。
先日熱烈な松太郎の口説きにより、晴れて恋人同士となった。
 

彩子は松太郎をかつての自分の旦那の林靖彦と比べることもなく、とても幸せに過ごしている。
松太郎は申し分がない程に優しい。頼り甲斐はあるし、気配りもあるし、それでいて威張りはしない。
 


 
「……」
 


 
その様子を見つめていたのは俊平である。
俊平がいわゆる恋愛の気持ちで彩子を見つめるようになったのは、それは彩子が初めて彼の勤める情報管理部に現われたときのことだ。
 


 
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