緑の君~月下の森~Ⅰ

真名

さわさわと葉の擦れ合う音…。五感の良いものには他に気配を感じた。






「あら、やはり来たの?」






木に向かい叫ぶ。






「桜田…。いえ“アキラ”!」






「さゆりは何処だ。“アヤラ“。」






「そこ。」






巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされている。






「返してもらうよ。」






ジャっ!互いの爪が鋭さを増して、瞳は爛々と輝く。






緑の瞳は紅い瞳に向かって行く…。






ガチリ!とぶつかる。






「ふん…。たかが100歳こえた妖怪に…。」






爪は激しく音をたて、糸が飛び交い、斬りつけ合う。死討が始まり。






紅い爪は横腹に刺さる。





「ぐっ…。」
ポタポタと体液が落ちる。






「どうしたの?動きが鈍いわ…。昔のようにもっと来てよ。人間の血食べてないの?」






シャ!






「よくも私の顔に…。」





いない?!何処へ?




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