緑の君~月下の森~Ⅰ
「名前を呼んだら大丈夫。あの時も、ちゃんと戻ったよ…。傍にいてください!」
泣きながらどうしてもイエスと言わない彼を見た。
放れたくないのに。ダメなの?
「私の血は食べれば、しばらくすれば元に戻る。献血と同じでしょ?!」
揺れる瞳が見えた。
「私の血をあげる。緑の君が生きられるくらいだったら大丈夫でしょ?」
緑の君はさゆりを見つめた。
さゆりは目の奥にうっすら緑の君を映す。
彼の瞳、漆黒の奥に綺麗な緑色が眠っている。
「必ず…。呼んでくれるか?緑の君と…。」
「はい!」
「そしたら、自分を見失ない。絶対に…。さゆりの声なら…。」
「ずっと一緒にいてください…。」
緑の君が小さくうなずく。
さゆりは嬉しくて走り出したくなりそうだった。
自分の力にまだ気づくはずもなく。
また祖母というやっかいな人のことも忘れていた…。
緑の森には風が吹き抜け。
二つの影が一つになり。
見つめあいながら約束の口づけを交わした。
白い月が空にうっすら見えていた。
END
第2章へ
泣きながらどうしてもイエスと言わない彼を見た。
放れたくないのに。ダメなの?
「私の血は食べれば、しばらくすれば元に戻る。献血と同じでしょ?!」
揺れる瞳が見えた。
「私の血をあげる。緑の君が生きられるくらいだったら大丈夫でしょ?」
緑の君はさゆりを見つめた。
さゆりは目の奥にうっすら緑の君を映す。
彼の瞳、漆黒の奥に綺麗な緑色が眠っている。
「必ず…。呼んでくれるか?緑の君と…。」
「はい!」
「そしたら、自分を見失ない。絶対に…。さゆりの声なら…。」
「ずっと一緒にいてください…。」
緑の君が小さくうなずく。
さゆりは嬉しくて走り出したくなりそうだった。
自分の力にまだ気づくはずもなく。
また祖母というやっかいな人のことも忘れていた…。
緑の森には風が吹き抜け。
二つの影が一つになり。
見つめあいながら約束の口づけを交わした。
白い月が空にうっすら見えていた。
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