緑の君~月下の森~Ⅰ

花壇

そう、眩しい日光と黄色い声が日陰に入ってくるようになった…。
園芸部は今、花時計を作っている。部員は少なく、ほとんどがさゆりが世話している。
突然の日光は困る存在だ。黄色い方に行って欲しい。
「バレー部に行かないの?」と促す。
黄色い呼び声が体育館から聞こえてくる。
「あぁ、辞めたんだ。」
「えっ?」
「まぁいろいろね…。」
サクサクと肥料を混ぜる。パンジーを移しながらどうやって日光を遮るか考える。何故なら…じっと横で見られてどうしても気になる。
「園芸部入ろうかな!」
何!何故!冷静な態度で動揺を見せずに
「そーですか。」
脇から覗き込み
「なんか冷たくない?」
「別に…。」
最近妙に花壇のそばにいる気がして、なんとなく嫌なのでちょっと不機嫌になっていた。静かな憩の場所、日陰に黄色い声と日光は正直キツイ。
中庭にすたすたと移動する。

パンジーが綺麗に咲いて可愛らしいと見ていると女子の黄色い声が通り過ぎる。

「まったく…。」と遠巻きに見ながら土をいじっているとミミズがいた。
「怖くない?」

「うわぁっ!」と飛びあがると緑の君がいる。

ミミズよりあんたの方が怖いわ!
突然のことに動揺しまくり、つい…。
「緑の君なんでここに…。」我にかえってしまったと思った「緑の君」は影で皆が使ってるあだ名だった。
「桜田君…。あっちで皆探してたよ。」

「あの子達ずっとついてくるから巻いてきた。それより、虫とか怖くないの?」
何が言いたいのこの人?わからないなぁー。あれか、女子は虫が苦手てやつ?別に怖くないし。
無視してしゃがむと突然抱きしめる。
何ー!!ちょっと!
そしてボールが緑の君に当たって綺麗な髪がなびいた。

「大丈夫?」
「えっ?」
庇ってもらったことより髪に見とれてしまっていた。
「ありがとう。み…桜田君…。」
「坂木さゆり」
「えっ?…。」
何故フルネーム?
「またな…。さゆり。」
いきなり呼び捨て?!
まるで借りは返せて言われたようだった。
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