王子様の恋愛事情【LOVEドロップス企画作品】
「絶対やんないよ、ミツは。っていうか、その前に“王子様”じゃないし」
なに、王子様って。
……バカバカし。
何が王子様?
小説を読んでるあたしをバカにする本人の呼び名が王子様って、絶対におかしいし。
王子様だったら、ヒーローみたいな事しなくちゃダメだと思う。
ピンチには駆けつけてくれる、とか。
さりげなく守ってくれる、とか。
あんな暴君が王子様なわけないし。
どっちかって言えば、王様だ。
……でも。
さっき見たミツは、ひかりの言うとおり、いつもとは少しだけ違ってた気がする。
いつもはあたしが何を言っても、殴りかかっても
『そんなんで勝ったつもりかよフン』みたいな顔して笑ってるくせに。
なのにさっきは……。
なんか、不機嫌っていうかすねてるっていうか。
本当になんだったんだろう、なんて思いながらミツの出て行ったドアを眺める。
さっきのミツの背中を思い出しながら見ていると、不意に孝太の顔が視界に入ってきた。