王子様の恋愛事情【LOVEドロップス企画作品】
『1-2だったよな。これ。……でもおまえ日直じゃねぇだろ』
『日直、田口。腕骨折してんじゃん。だから代理』
ミツの言葉を聞いて、田口の事を思い出す。
先週、バスケの部活中に左腕を骨折して、3週間はギプスだって言ってたっけ……。
だからミツが日直の仕事を手伝ってるの?
『崎本は本当にそういうとこ気がつくよな』
『別に。学食から帰るついでだし』
『誰かさんにも、そういう優しさが伝わればいいのにな』
矢野センが何の話をしているのかはよく分からなかったけど、なぜだかミツは黙っていた。
ドア越しじゃ、表情までは見えないから、それがじれったく感じる。
今ミツはどんな顔して黙ってるんだろ。
さっきもだけど、後ろ姿しか見られなかったり、こんな風に声だけしか聞けなかったり。
そういうのって今まで経験した事がなかったから、やけにじれったく感じた。
……でも、そっか。
優しいトコ、あるんだ。
あれ……、でも、ミツって昔からわりと優しかったような……?
そう思って、思い出そうとするのに、浮かんでくるのはミツの減らず口ばっかり。
……でも、確かに……、