王子様の恋愛事情【LOVEドロップス企画作品】
ゴミ箱を抱えてるから、前が見えなかった。
そのせいで、階段の1段目を踏み外して落ちそうになったのに。
「……っ」
気付いた時には、左腕を力強く掴まれて、しりもちをついてる状態で……。
あたしの代わりに落ちて行ったゴミ箱が、カランカランって……もしかしたらもっと派手な音を立てて階段をすべるように落ちていく。
「大丈夫か?!」
ぼう然としてると、心配そうな顔をした田口が聞く。
顔をあげようとして……、まだ掴まれてる腕に気付いた。
振り返る前から、助けてくれたのが誰だか分かってた。
それは、雰囲気だとかそういうのもあるけど……、知ってるから。
この腕の強さを、昔から。
ゆっくりと振り向くと、ムスっとしたミツと目が合う。
そして、いつものように、すぐに文句が飛んできた。
「おまえ、ガキの頃から何度階段落ちそうになってんだよ。
もう10回は助けてやった気がするんだけど、それ、俺の気のせい?」
「……だってそれは、いつもタイミングよくミツがいるから」