王子様の恋愛事情【LOVEドロップス企画作品】
「早く帰んねーとおばさんに怒られるんじゃねーの?」
「あ、うん」
手に持っていた林檎うさぎのキーホルダーを元の位置に戻してから、ミツの後を追った。
レジを済ませると、ミツが横から奪うように荷物を持つから、「ありがとう」を言うタイミングを逃す。
そのまま、家までの道を並んで歩く。
夕日って呼ぶに相応しい太陽が、道を柔らかく照らしていた。
「そういえば明日香、小学校の頃、クラスのヤツとケンカになってケガした事あったよな」
隣を歩いていたミツが急にそんな事を言い出すから、昔話を懐かしく思いながら答える。
「あったね。そんな事」
「男相手に殴りかかってくとか、普通しねーだろ。
あれ、結局何が原因だったんだか、俺知らねーんだけど」
「……ミツの事、榊くん達がバカにしてたんだよ」
ずっと、その事はミツには内緒にしてた。
ミツのタメだなんて思われたくなかったのもあるけど。
ミツのタメじゃなくて、あたしが気に入らなかっただけだし。
聞いたミツは、眉を潜めて信じられないって顔をしてあたしを見た。