王子様の恋愛事情【LOVEドロップス企画作品】
「いいよな、明日香」
「んー!」
「ほら、『うん』つってる。いいって。で、村上がなに?」
完全に承諾の「うん」じゃないのは、ひかりから見ても明らかなのに。
ひかりは、あたしの必死の抵抗を笑いながら話し始める。
「村上がね、明日香に気があるっぽいんだよね」
「村上って、隣のクラスの?」
「そうそう。村上孝太。ほら、体育とか選択の美術とか、うちと一緒じゃん。
で、美術の授業で毎回明日香の隣の席でさー、多分話してるうちに好きになっちゃったんじゃない?
やたらと明日香を気にかけてんの。ね、明日香」
『ね、明日香』なんて聞かれたって、口を塞がれてたら返事もできないし。
それに気付いたのか、ミツが押さえ込むようにして塞いでいた手を離す。
「悪い、忘れてた」
「顔とか触んないでよ! これでも一応メイクしてるんだから」
不機嫌に言うと、ミツは眉を潜めてあたしの顔を覗き込む。