たまには、こんな日も
全部全部悠君のせいにして、熱のせいか、また私はウトウトと眠りの世界に落ちていった。


「実里」


眠り始めてすぐだった気がする。


頭まで被っていた布団をめくられて、私は重い瞼を持ち上げた。


「眠いの」


「分かってる。でも寝る前に、桃食べて薬飲むんだ」


「もも?」


悠君に体を抱き起こされた。


「ほら」


腰に手をまわして、悠君は私が倒れないように支えてくれる。


「ちょっとでいいから」


フォークに刺された一口サイズの桃が、私の口元に当てられる。


それを口に含むと、缶詰の桃じゃない、本物の桃の甘さが口中に広がった。


桃は、私の一番好きな食べ物。


悠君、わざわざ買ってきてくれたの?
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