本当の君
じゃあ、ありのままの自分になったらいいんじゃないの?
って聞いたら、彼は『もう自分の姿が分からないんだ。覚えてない。変身を繰り返ししていたせいで。……でもいいんだ。どうでもいい』と言った。
私はそれを聞いたとき、どう返したら良かったのか分からなくて黙ってしまった。
彼も黙ってしまって、その日は会話を交わさないまま終わってしまった。
今でもあの顔が忘れられない。
彼の本当の顔じゃないけど、悲しそうだったから。