架空の城塞
 恐らく、彼女が面白がってわざと深度をいじっていたに違いない。

 指示と同時に適性深度に変更された。

 システム管理人として優秀なのだが、茶目っ気が多すぎる。が、この帝国軍最新の城塞システムを玩具のように楽々と運用管理している彼女の能力は、驚愕に値する。

 まるでこのシステムの為に生まれてきたかのようだ。

 そんなリユレイの思考に感謝の意が割り込む。

 また勝手にベイグが思考の覗き見をしていたに違いない。リユレイは無意識に自分のシステム防壁クラスを上げていた。

 城塞システムの強力な共有能力にどこまで対抗出来るかは判らないが、気休めにはなる。

 そんな数秒のやり取りが終わる頃、第2次探査プローブの展開が完了し、完全な星系内リアルタイム情報が反映された。

 敵の防衛艦隊の所在も明らかになった。

 やはり、プラント艦の周囲に展開していた。

 星系内には、いくつかの哨戒部隊が展開しているようだが、それらも集合してきていた。

 その様子が、タイムラグ無しに星系図に映し出される。

 敵艦隊が無防備なのでは無い。恐らく最大限のステルスモードを効かせている筈だ。

 星系内に展開している探査プローブは強力なセンサー群で周辺空間の精緻モデルを作っている。その情報を城塞システムでリンクさせ、例えステルスモードによる電磁波遮断や透過を行っていても、各プローブからの情報の矛盾点を洗い出して無効化していた。

 もちろん、敵も探査プローブの存在を認識している筈だが、その数は多く、全てを駆逐する前に、必要な情報は得られている。

 そう、1度正確な情報が得られれば、次の行動は決まっていた。

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