妖怪外伝百鬼夜行
「えっ、先生も頼まれたんですか?」

昼休みに陽を呼び出し、話をした。内容は千夜に正体を知られたことと、七不思議の調査のことだ。それを聞いたとき、陽は意外そうに目を丸めた。

「その口ぶりだと、陽も頼まれたようだな」

「はい。……千夜、オカルト嫌いのはずなのにおかしいなぁと思ってたんです」

「オカルト嫌い? そうなのか?」

「ええ」

今度は陽の口から意外な言葉が出てきた。
千夜のオカルト嫌い。そのはずがなぜ、七不思議の調査なのか。その理由は分からない。
詳しく聞いてみても、陽にすら話してくれないようだ。

「……まあ、受けちゃった以上はやりましょうか」

「とはいえ、妖気は僕と洋子の者以外、全く感じないがな……」

妖怪の仕業ではないことがこれで確信が持てた。
妖怪ではない何かの仕業であるのだろう。そこで二人の話は終わった。



「烏丸先生」

「ああ、穂村先生。なにか?」

陽と別れ、職員室に戻ったとき、隣のデスクの教師に声をかけられた。

「先ほど、先生のクラスの宮川が、先生を探していましたよ。急ぎの用ではないと言っていたのですが、一応お知らせしておきます」

「はあ……ご丁寧にどうも」

教師は穏やかにほほ笑み、自らの仕事に戻った。
中性的な顔立ちと落ち着いた物腰の彼は、穂村由月。三年のクラスを受け持つ英語教師。
気品漂うその姿から王子様の様だと女子生徒や女性職員からの人気が高い。
柑橘系の香りがするからと『ゆず先生』と呼ばれている。カラス先生とはえらい違いだ


どうせ千夜の用事は七不思議調査のことについてだろう。
そのことは後に聞くことにして、烏丸は自身の仕事に戻った。

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