妖怪外伝百鬼夜行
「……」
ピアノの音が止まったとき、カラスが戻ってきた。
烏丸の腕にとまって、鳴いている。近くで見るとやはりカラスはグロい。
千夜も陽も身を引いた。
会話が終わり、カラスは空へと飛んだ。
烏丸は自分の唇に触れながら、すこし考える。
「女がピアノを弾いていたらしい。ドアも開いていたようだ」
「女……。やっぱり……」
女がピアノを弾いていた。そのことに、千夜は表情を暗くする。陽がそれを聞こうとした時、また足音が聞こえてきた。
「警備員だ。行くぞ」
「どこですか?」
「職員室。音楽室の鍵があるのかの確認だ」
おそらくはまた警備員の見回り。それは近づいてきている。
階段を下りて行く足音。三人は即座に二階を進み、職員室へと向かった。
鍵は、開いている。
こっそりと三人は職員室へと入り、鍵の保管場所を確認する。
鉄の箱の中にある教室の鍵。その中で、音楽室の鍵が消えていた。
「……幽霊の仕業でないことは確かだな」
「でも、ここの鍵って……」
幽霊ならばドアもすり抜けるし、鍵をとりには行く必要はない。
やはり人間の仕業ということになる。ならば誰なのだろうか。そしてその目的は……。
――カツカツ
その時、また足音が聞こえた。今度は二人分の足音。
また三人は職員室のデスクの影に隠れた。
足音は職員室の前に止まって、ガラリと戸をあけた。