風が強い日に




「東くんは……

【雛】嫌ぃ……??」



ドキドキしながら言った…。

継ぐつもりはなくても、

代々受け継がれた物だもん。

あたし達が…作って守ってきた物だもん。



だから……嫌いにはならないでほしい。





「嫌いじゃないよ」

「………本当!?」

「うん。なんか優しい味がするから好き」

「…ありがとぅ」



何だか嬉しかった。

【東】が【雛】を好きだと言ったことが。

東くんが【雛】を好きだと言ったことが。

嬉しかった。




「雛型さんは?

【東】好き?」


「好きだよ!!

部活のみんなも好きって言ってる!!」


「そっか…」



「ってか怒られないの?」

「へ?」

「今の当主、めちゃくちゃ怖そうじゃん」

「おばあちゃん?」

「そ」


「おばあちゃんは怒らないよ。

『老舗の味を知るのはいい事だ』って

いつも言ってる」


「へ〜

案外【雛】と【東】って仲いいのかもな」


「え?」


「じぃちゃんがよく【雛】を食べてたから」

「そっかぁ〜」



何だか嬉しいな……







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