愛していたのに
異常狂者
(一)
地下室へ通ずる重い扉を開ければ、一気に腐臭が彼女の鼻をついた。
思わず腰にある剣を抜いてしまうのは致し方がない。
女騎士と舐められがちだが彼女の腕は一流であり、何事にも動じない精神は戦いにおいて必要不可欠だった。
彼女は動じなかった。
石造りの地下室の至る所につるされた“人間だったモノ”らに。
成人男性さえも顔色を変えるはずなのに、彼女は動じず至って普通に。
「……」
周りを見回し、そいつを見つけ出した。
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