パラレル・ワールド~君と僕の命の起源
「僕はね、思うんだ。
時間の概念に後も先もないんじゃないかって。
そもそもこの百数十億年という宇宙の歴史の中で、我等人間のたかだか数万年の歴史なんて一つの点にしか過ぎない。
その一点に集まったエネルギーの発散に僅かな誤差が生まれたとして、何か不都合が起きるだろうか?」
「そうよ、時間の概念なんて絵空事よ。
そもそも時間というのは、今と今じゃない世界を分けるためだけのものなのよ。
全てはわたしたちの中にある。わたしたちの中では後も先もない。
前世の記憶も来世の記憶も現在の記憶も、等しく価値があり、そして無限なの」
葵さんは、その美しくシトヤカな見た目とは違って、放つ言葉は辛辣でした。
「葵、そう一気に飛躍したら坂本くんが混乱するだろう。
つまりね、坂本くん、僕らのDNAには、そういう個人の生の履歴、つまり前世の記憶が刻みこまれているってことなんだ。
いや、もしかしたら来世の記憶までもが、今現在進行中で刻み込まれ続けているのかもしれない」
僕の魂はその時、暗黒の闇の中へと突き落とされたのです。