パラレル・ワールド~君と僕の命の起源
>仮想か現実か
夕方、大学の研究室に戻ると、風花が僕を待っていました。
「今日のゼミ、欠席だったから、このレジュメ渡そうと思って」
風花は少し戸惑いながら、キチンとホチキスで止められたプリントの束を僕に差し出してくれました。
「嗚呼、ゴメン、フウカに連絡するの忘れてた。
山本教授には以前から言ってあったから。
今日はさ、年に一度の『平行宇宙研究会』のシンポジウムがあったんだ」
「なにそれ?
あ、それってシンくんがいつも言ってるパラレル・ワールドに関係あること?」
「良くわかったね。平行宇宙、訳してパラレル・ワールドだ」
「なぁんだ、英語か日本語かの違いだけじゃない。
中味が胡散臭いことには変わりないですよぉ」
「それがさぁ~」
と、僕は喉元まで出かかった言葉を呑み込みます。
僕が聞いたあの話を、直接風花に伝えても仕方のないことですよね。