パラレル・ワールド~君と僕の命の起源



「遅いまぁ~」


人気のない玄関をそおっと開けて、僕はソロリソロリと家の中へと進入を果たします。




何故僕が、今日みたいな状況で自宅へ戻っているのかって?

それには、訳があるのです。

風花の両親は既になく、彼女は現在、年老いた祖父母と暮らしています。

が、祖父母、と言ってもそれ、人それぞれ。

風花の亡母の両親である彼らは、まだ六十台前半、気力も体力も有り余っているようで。

風花が大学生になるや否や、にわかにボランティア活動と旅行熱に浮かされ、一年の殆どを海外で過ごしているらしいのです。

なので、お二人には付き合い出して間もない頃、一度お目にかかったきり。


「いやぁ、わたしらももう老い先短いですからな。

これからは自分等の好きなことに邁進するつもりです。

風花も立派な大人になったことだし、こんな素敵な彼氏も出来て、わたしらも安心して家を開けられます」

なんて、サバケタことをおっしゃられて。

そうあからさまに放任されると、真面目な僕としては、きっちり自己規制を敷くしかないじゃありませんか。

だから、僕は自分に大きなルールを課すことにしました。


『絶対に風花の家には泊まらない』


まぁ、身も心も風花に溺れないための布石なんですけどね。
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