パラレル・ワールド~君と僕の命の起源
葵さんが包みから取り出したのは、何の変哲もない、ただのビニールシートでした。
あ、お花見の時にみなさんが場所取りに使う、あの青いビニールシートじゃありませんよ。
塩化ビニール製の透明な、少し厚みのあるマットのようなものです。
「なに、これ、って顔ね」
「え、えぇ、まぁ……」
「これで絶縁するのよ、車と水盤を。
少しの隙間でもいいから、兎に角、この水盤を持ち上げてっ!」
僕が必死になって風呂敷を引き上げて作ったその僅かな隙間に、葵さんがその秘密兵器を差込みます。
途端、風呂敷に包まれた水盤の重みが、フッと軽くなったように感じられました。
「え、えぇぇ……これって」
「この水盤はね、地球に引き寄せられているのよ。
いや、引き合っていると言うのが正しいかな」
「葵?」
「はい、あなた、シールドは完了しました」
「じゃ、兎に角、場所を移そうか」
原口さんの言葉を合図に、僕達は軽トラとバイク、電気自動車に乗り込み、『無限堂』を目指して走りだしました。