パラレル・ワールド~君と僕の命の起源

そこには、とても解読不能と思われる、蛇が渦をまいたような不可思議な文様が規則正しく並んでいました。

明らかに、これは文字です。


「で、シンくんの見解は?」


「はい、これは日本のマタギに古く伝わる『阿比留(アヒル)文字』だと思われます。

これは、現在我々が使用してる漢字とは全く発生の異なる古代文字で、名詞と動詞、形容詞だけで構成された、いわゆる事象を伝えるための書き文字であることが特徴です。

つまりですね……」


「嗚呼、そういうまどろっこしい説明はいいから、つまり、ここには何が書いてあるわけ?」


気の短い姉蓮が、僕の高尚な解釈の腰を折りました。


「僕にも、ここに書かれている全てが解読できるわけではないのですが、まぁ、おおよその概略を述べさせて頂きますね。

ここには、まず『この水盤は宇宙の姿を映す』と書いてあります。

『ただし、この水盤がその姿を映すのは、おおよそ百年に一度、地軸と水盤が引き合う時』とも。

そして『この水盤に向き合う者は、心穏やかでなければならない』と」


「断片すぎて、わからいわね」


いやいや、姉上さまのご意見もごもっともです。
< 58 / 81 >

この作品をシェア

pagetop