秋空ノート
SS
ホワイトクロウ
「ちょっとお話しませんか?」
白いハット、白いタキシード、白いマント。全身白で包んだ目の前の男は、黒い液体の入ったティーポットを見せながらそう言った。
男は目の前に座った私に、早速とでも言うように話し始めた。
「一人の男性と、一人の女性が居ました。彼らはお互いを好きあっていた。」
所謂カップルというやつですね、と男は黒い液体をティーカップに淹れながら更に続けた。
「彼は、彼女を愛するが故に、彼女を自分の部屋に閉じ込めた。愛するが故に、ね。」
どうぞ、と男は先程のティーカップを私に差し出した。
「さて、籠の中の小鳥は彼と彼女、どちらだったのでしょう?」
どうです?と男は問うた。それは男の淹れたコーヒーに対することなのか、それとも男の話したことに対することなのか。
「……美味しい。」
取り敢えず、コーヒーに対する感想を述べた。
「ありがとうございます、それで……。」
男は微笑みながらも、急かすように言った。どうやら先程の言葉は男の話に対することを聞いていたらしい。