ふたりぼっちの家

10年前―

『ぱぱ、早く、早く。』

「こらこら美玲、走ったら危ないぞ〜?」

『大丈夫らょ!』

「ほら、信号だ。信号は…」

『みぎ、ひだりでクルマのかくにん!!わかってるょお?』

「そうだょ」

『み〜ぎ、ひだ〜り、』

ふざけながら信号を渡りだした私。でも、すぐ近くの角を曲がって急に現れた車に気付かず、私は跳ねられた。

「美玲、待てッ!!」

『え?ぱぱ、わたらないの〜?はや…』

ドーンッッッッッ!!

私が目を覚ました時、お父さんとお母さんが喧嘩するのを辛そうに見ているひな兄が見えた。

「…ないで見てなさいよ!!」

「見てたさ!車が急に…」

「なんで手、繋いでなかったの?!美玲がこうなったのはあなたのせいよ!!」

「父さんも母さんもやめろよ!!美玲…?」

『ひなにぃ…ぱぱもままも喧嘩しないで…』

「…ごめんなさいね、美玲…」

『仲良くしなきゃ…ダメだょ…?』

このとき、私はまだ幼すぎて、この先のことなんて何も考えてなかった。
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