狼彼氏とお嬢様♡
【支葵】
朝。
窓から差し込む光に本当に陽が高くなったものだと思う。
夏は嫌いだ。
何もしていないのに汗が出てくることが不快極まりない。
体温を下げるための現象としては仕方のないことだとは思っていても気持ち悪いものは気持ち悪い。
憂鬱な気持ちを俺は二度寝という素晴らしい方法で回避しようとした。
が…、
「支葵いーっ!」
『…………。』
つかの間の喜びに終わった。
別に、全然残念とかじゃないけどさ。
むしろ…、
『穂乃歌…、』
「あ、起きてたの?
なら下りてきなさいよー。
朝ごはんできてるんだからね?」
『ん…。』
幸せすぎる。
「それに、今日はお屋敷に行くんでしょう?」
『あぁ…そーだった。』
本当は、覚えていたけど。
忘れたフリをする俺に、穂乃歌は
忘れてるなんて信じらんない
なんて小さな悪態を付いてきた。
俺が忘れるわけないのに。
だって今日お屋敷に行く理由は、俺にとって1年の中ですっげぇ重要なことだし。