狼彼氏とお嬢様♡
「ボーっとしてんなよ、行くよ。」
『っ…!』
ボーっとしてた訳じゃなくて、驚きと怒りに身を震わせていたんですっ!
なんて反論すればまたあの狼が襲ってくるであろうから言わないけどっ…
「くく……ふっ…」
笑いこらえている感じがずっっっごい頭に来る…!
余裕な顔に歪んだ口元。
うっすら滲んでいる涙。
全部が私をバカにしてしているとしか思えなかった。
『もうっ!さっさと行くわよ!』
私は足早に玄関へ向かい、靴を履く。
後ろから聞こるゆったりとした支葵の足音。
振り返り、
『ノロノロしてないで…っ!?』
“よ”
あと一文字が言えなかったのは…
「からかいすぎた、ごめんごめん。」
支葵の唇が落ちてきたからで。
『…絶対思ってないでしょ……。』
「ん?
早く行くぞ。」
支葵は小さく笑って
私より先に玄関を出ていってしまった。
『狼だ…、もはや悪魔…?』
私の声が、誰もいないこの家に響きわたった。