二 億 円
急に態度を変え、部屋へと押し込むと、彌生様はさっさと自分の部屋へと戻っていった。
正直、抱かれると思った。無理矢理犯され、地獄を見ると思った。
―――お兄ちゃんのときのように。
「………げほっ。」
無理矢理引っ張り続けられたせいで喉が痛い。
「…ぁ゙…っい゙…」
思うように声が出ない。
声が 出 な い ?。
まさか、そんなはずはない。
ただ今は声が出にくいだけ。きっと一時したら元に戻るはず。
そう、言い聞かせるしかなかった。
トン トン 。
部屋の戸が叩かれ、我に返った。
「…ひなた、私だ。食事を持ってきた。」
戸の向こうには刹那さんがいた。
気まずそうな表情がなんともいえなかったが、きっとさっきの姿を見たからだろう。
「…っ…。」
ペコ、と軽くお辞儀をし、声は出さなかった。
美味しそうなスープに焼きたてのパンの匂いが、私のお腹を空かせた。
「…ひなた。食事を済ませたら早く寝なさい。そして朝方、私の部屋へ来なさい。」
それだけ言い、机の上に鍵を置いて出て行ってしまった。
どこの部屋の鍵かも分からないけれど
とてつもなく悪い予感とこれほどまでにない期待感が私を満たしていた。