二 億 円
軽く会釈をし、小走りで廊下を駆け出す。
暫くすると、裏門があった。
蔓が深く絡みつき、私だけでなく、この屋敷にいる人間全てが出ていくことを拒んでいるようだった。
(鍵穴…鍵穴は…)
蔓を掻き分け、鍵穴を探す。
(……あった。)
ガチャ
刹那さんから貰った鍵がはまる。
鍵は開いた。だが、蔓が絡みつき、なかなか外に出れない。
急がないと、彌生様が来てしまう。
(お願い、通して…お願いだからっ…)
無理矢理蔓を引きちぎりながら、外へと出る。
(いっ…た。…ナニコレ。)
足に何か絡まり、地面に俯せる。
蔓とは違う紐状の何か。よく見ればそれがコードだということはすぐにわかった。
わかるはずなのに
この時の私は焦っていた。
早く出なくちゃ。
捕まっちゃう。
それしか頭になかった。
(もうっ…邪魔しないでっ)
ブチッ
足に絡みついたコードを引きちぎる。それが間違いだった。
引きちぎった途端放たれた火花、雷光。
体中に走る戦慄。
頭の先からつま先まで全てが動きを奪われた。
うっすら思考がある中、遠くに見える人影。
(刹那さ…ん。助けて…)
私は刹那さんだと勝手に勘違いしていた。