二 億 円
目の前が霞む。
(駄目…起きなきゃ…。)
必死に力を振り絞るものの、私の体は何も反応しない。
次第に思考すら奪われ、瞼は重くなる。
(──刹那さ…ん。)
───────────────────────────────────────────────────────────────────── ─ 悪戯 は 駄目 ですよ? お 人 形 さ ん。──
頭に響く、私を支配する声。
一瞬にして頭が冴える。
一瞬にして体が強張る。
一瞬にして、私の希望を奪った。
私の体は声の主に抱えられ、あっという間に宙に浮く。
「私の可愛い可愛いお人形さん。こんな所で何をしていたのですか?」
(分かっているくせに…)
何も知らない素振りで、私を宥める。
「そんな目をしないで下さい。まるで私が悪いみたいじゃないですか。悪いのは私ではない。貴女でしょう?
さあ、お部屋へ戻りましょう。
悪戯した子には罰を与えないと、ね。」