二 億 円
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「いい加減解放してやれ。」
私の耳に届いた不機嫌そうな美しい声。
振り向けば今まで見たことないほどに顔をしかめ、私を蔑みの表情で睨み付けていた。
「おや、刹那さん。どうしてこんな所にいるのですか?」
「しらばっくれるな。いい加減ひなたを解放してやれ。鬼畜野郎。」
「相変わらず懐かないメイドさんですね。」
溜め息を吐き、ひなたを床に座らせ、刹那さんに近づく。
「刹那さん。私は別にひなたを縛っているわけではありません。
なので、解放するにもできません。よって私は鬼畜ではないですよ。」
当たり前のことを述べる。
ひなたを解放?意味が分からない。
私は別に束縛や監禁をしているわけではない。
ただ、側に置いているだけ。
視線を左下へ向けると、寝息を立てながらぐったりとしている少しやつれたお人形さんがいる。
真っ白だった肌はさらに白さを増していて、華奢な身体はますます細く美しくなっていた。
私の理想のお人形さんが、みるみるうちに完成体に近づいている。
そう思うだけで、笑みが零れてしまいますよ。