二 億 円
「うぁっ…離せっ…は、離して…っ!」
優しく抱き寄せると、全身全霊で拒絶をする。
刹那さんはそういう人。分かっていますよ。
「黙りなさい。静かにしないと、ひなたが目を覚ましてしまう。
それとも、貴女のその歪んだ表情、感情をひなたに見せたいのですか?
私を求めるその淫らな姿を見せつけたいのですか?」
こう言えば、刹那さんは抵抗を止める。唇を噛み締め、悔しそうに私を睨みつけながら。
「…鬼畜。私のことなんてもう何とも思ってないくせに。
私はお前のペットじゃない!
いつでも好き勝手抱けると思うな。」
手に持っていた箒を思い切り投げつけられ、思わず怯む。
その隙に腕をすり抜け、走り去られてしまった。
「…勝手なのはどちらでしょうね。」
まあいいでしょう。
私にはひなたがいます。
楽しみはまだまだこれから、ね。
優しく抱き寄せると、ひなたの服や髪にはシンナーの匂いが染み付いていることに気が付いた。
「まずはお風呂に入れてあげなくては。」