二 億 円



───温かい。


全身の痛みが消えていくよう。


蒸気が私を優しく撫でる。


此処は…どこだろうか。



「──…」


目を開くと、やはり何も見えなかった。


肌に触れると、何も身につけていない。

服は?下着は?誰が此処に連れてきた?


何も、分からなかった。

分かるのは、此処が浴室だということだけ。







「目が覚めましたか?お人形さん。」


少し遠くで、彌生様の声が聞こえる。恐らく浴室の外にいるのだろう。


(彌生様が全てしたの…?)

思わず自分の身体を抱き締める。




「安心してください。貴女をそこへ入れたのは私ではありませんよ。刹那さんにお願いしましたから。というよりは、刹那さんから無理矢理奪い取られた…と言う方が正しいですけれど。」



少し声のトーンを落としながら話す彌生様だったが、何だか苛立っているように感じた。



     ガ チ ャ





「─────っ!!!!!!!」




突然体に襲いかかった電流。


思い出したくないこの痛み。




「ゃ……っ…ま…」

たどたどしい言葉しか喋れない自分に苛立ちが募る。


「聞こえません。何を言っているのですか?言いたいことがあるならハッキリ喋りなさい。」



「ぁ゙っ──────!!!!」



再び襲いかかる電流。


そう、この痛みは…あの時と同じ。




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