二 億 円
「逃げられなかったか。ごめん…ひなたを辛い目に合わせてしまった。早く、早く彌生から解放してあげたかった。
私みたいになる前に。」
優しく、優しく、抱き締められた。
お兄ちゃんや、彌生様のような強引なやり方じゃなくて
まるで空気のように優しく抱き締めてくれた。
「せっ……さ……」
恐る恐る刹那さんを抱き締めかえす。
すると、優しく抱き締めていた腕に力が入る。
「……ひなたは細いな。真っ白で、か細くて、……まるでお人形だ。簡単に折れてしまう。」
ギ リ ッ
「い゙っ───!?!?」
刹那さんの腕に力が入ったのが分かった。
「骨なんて、簡単に折れてしまうのさ。ひなた…早く此処から出ていけ。お前が来てから私は……──いや、何でもない。すまない。少し苛立っていて…ごめん。さあ、部屋まで連れて行く。まず体を拭いてあげる。」
いつもの淡々とした刹那さんに戻った。だが、さっきは明らかに私に嫌悪感を抱いているようだった。
気のせい、だろうか…
服を着せてもらい、刹那さんに手を引かれ、私は部屋に辿り着いた。
目は、相変わらず見えないけれど、うっすらと光の加減なら分かるように回復していた。