二 億 円



「私は、母を早くに亡くしました。


父と弟と、家政婦さんの四人で生活していました。



父が家に帰ってくることはまれにしかありませんでした。


いつも知らない女を連れ歩き、色んな女と毎晩過ごしていました。



父の会社を継ぐことになり、私は反発を繰り返しましたよ。

こんな男の後を継ぐ……?
そんな侮辱的なこと出来ない、とね。


しかし、あなたを公園で見かけてから





私の心は一変したのです。」




胸が騒いだ。

私が、両親に売られた理由


うっすらと気づいてはいるけれど、はっきりと分かることが怖い


聞きたくない




「あなたを手に入れたい。ただ、それだけでした。


だから私は、あなたの家族に近づき、あなたを幸せにするとありきたりな条件と、多額の金を積み、あなたを手に入れました。





二億という金で、あなたを買いました。」



分かっていた事実。目を背けていた。



けれどこれが私に起きた真実。



お父さん お母さん
やっぱり、私が憎かったのですか?



人殺しをしてしまった私はもう、娘ではないのですか?




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