二 億 円



細い指が私の顎を捕らえ



少し長めの綺麗な髪が私の頬をくすぶる





「涙も声も視力も必要なんてありません。


あなたには私がいますから。



何も不自由なんて、ありませんよ。」




微笑む姿はただの過保護な親のようで


私を屋敷という檻へ閉じ込めた。






「──っ!!!」


唇に感じた違和感。
内股に伝わるひんやりとした手の感触。




頭によぎるのは大嫌いなお兄ちゃんのあの姿、あの行動。







欲にまみれた薄汚い獣の姿。










「…………ぃゃ 。」




嫌だ。  嫌だよ止めて。



   汚い。 私に触れないで。






「そんな目で………そんな、拒絶の瞳で、見ないでください。





雅樹を見るような目で、私を見るな。」




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